甲状腺外科

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甲状腺外科

診療科の特色

当科は甲状腺、副甲状腺を中心とした頸部の手術を行っています。
診療に際しては、日本内分泌外科学会のガイドラインを基本とし、患者さんにとって最良となる治療を提供しております。

甲状腺画像

甲状腺疾患に関して

外科的治療を要する甲状腺疾患には腫瘍性疾患と機能に関する疾患および炎症性疾患があります。
各々について説明させていただきます。
 

1. 腫瘍性疾患

甲状腺の腫瘍性疾患には悪性腫瘍と良性腫瘍および良性腫瘍性疾患があります。
これらは超音波断層撮影装置(いわゆるエコー)を用いた穿刺吸引細胞診にて診断します。
以下にそれぞれ説明いたします。

副甲状腺画像
  1. 甲状腺悪性腫瘍
    甲状腺腫瘍性疾患の中で手術適応となる可能性が一番高い疾患です。
    悪性腫瘍は組織型によって分類されますが、頻度順に乳頭癌(90%)、濾胞癌(5%)、悪性リンパ腫(3%)、髄様癌(1%)、未分化癌(1%)、低分化癌(ごくわずか)となります。
    甲状腺はよく蝶が羽を拡げたような形にたとえられます。上記の悪性腫瘍はその大きさやリンパ節への転移の有無などにより切除範囲が定められております。腫瘍が大きい場合やリンパ節への転移が多く認められる場合および遺伝性の悪性腫瘍(非常にまれですが髄様癌の一部)の場合は全摘が推奨されています。それ以外では片側の蝶の羽を切り取る(羽の事を葉といいます)葉切除が選択されます。腫瘍の大きさや周囲への浸潤の程度により異なりますが、通常、葉切除の場合には手術時間は1 ~ 1.5 時間程度です。手術の全身への負担は少ないですが、色々な機能が集中する頸部の手術となりますので、手術に際しましては細心を払っております。甲状腺周囲には声の質に関係する神経が走行しています。一つは声帯を動かす反回神経です。これが麻痺すると声帯の動きは悪くなるため声が嗄れてしまいます。また、物を飲み込むときにムセやすくなります(誤嚥といいます)。他に上喉頭神経という高い声を出すときに関係する神経もあります。術後しばらくは高い声が出にくくなる場合もあります。悪性リンパ腫は診断がついた後は基本的には血液内科にて薬物治療(化学療法)にて治療します。
    一般的に甲状腺悪性腫瘍は他の臓器ほどには悪性度は高くありません(乳頭癌はケースによっては1cm未満のものは経過を見ることもあります)。ただし、頻度は非常に低いですが、未分化癌だけは全く違う病態をしめします。この癌は極めて悪性度が高く、また急速に増大し治療が困難なことが多いです。ご高齢の方に多いので治療をためらわれる患者さまも多いですが、治療が可能であればなるべく早く治療をお受けいただくことは大切です。
  2. 甲状腺良性腫瘍
    甲状腺の良性腫瘍は濾胞腺腫と呼ばれています。
    この腫瘍は濾胞癌との鑑別が細胞診では行えません。細胞診では濾胞癌と濾胞腺腫の鑑別が付かないため両方の可能性をふくめ濾胞性腫瘍と診断されます。このため、濾胞性腫瘍と診断された場合には一般的に腫瘍径が3cm(4cm とする場合もあり) または採血にてサイログロブリンという項目が高値(1000 以上)では手術をお勧めします。
    切除した腫瘍をよく病理検査し、万が一濾胞癌であった場合には追加で手術が必要となることがあります。手術方法は基本的には悪性腫瘍と同じような手術を行います。
  3. 良性腫瘍性病変
    腺腫様甲状腺腫と呼ばれ、甲状腺の結節(できもの)の中で最も多く認められるものです。
    細胞診で診断されることが多く、サイズが大きくなければ経過観察となります。
    ただし、非常に大きくなるものもあり、気管が圧迫されて呼吸が苦しくなったり胸の中に向かって増大したり(縦隔甲状腺腫と呼ばれます)こともあり、そのような場合には手術適応となります。また、悪性腫瘍との鑑別が難しいこともあり、その場合にも手術適応となります。
     

2. 甲状腺機能異常

甲状腺は甲状腺ホルモンという非常に大切なホルモンを生成、分泌します。甲状腺ホルモンは一般に臓器を活発に働かせる 働きがあります。また、成長にも関与しています。 このホルモンが多すぎたり、足りなかったりすると様々な症状が起きます。機能異常も外科の治療が必要となる場合があります。

  1. 甲状腺機能亢進症
    一般的にはバセドウ病として知られている病気です。 甲状腺が甲状腺ホルモンを過剰に産生、分泌する病気です。動悸、発汗、発熱、体重減少、眼症状、気分の変動などの症状を来します。通常は内服薬で治療しますが、内服薬での治療の効果がない、または副作用で継続できない場合には放射線治療や手術が行われます。内服薬の次の治療手段としては放射線治療ですが、放射線治療は小児や早期の妊娠を希望している方にはおこなえないため手術が選択されます。また甲状腺が大きく腫大している場合も放射線治療が効きにくいので手術が選択されます。そのほかに早期のバセドウ病の治癒を希望されている方も手術の適応となります(内服薬による治療や放射線治療は6 ~ 24 か月を要すことが多いです)。基本的には甲状腺を全摘します。甲状腺全摘のため術後は甲状腺ホルモンの内服をしていただきます。
    また、稀ですが甲状腺の中にできた結節が甲状腺ホルモンを過剰に産生、分泌することもあります(自立性機能性結節といいます)。この場合には手術が第一選択で結節のある側の葉を切除します。
  2. 甲状腺機能低下症
    一般的に甲状腺機能低下症が手術適応となることは稀です。甲状腺機能低下症には種々の原因がありますが、その中で慢性甲状腺炎(橋本病ともいいます)は甲状腺が大きく腫大することがあり、その結果として気管が狭くなってしまうことがあります。その場合には気道確保を目的として手術をお受けいただくことがあります。
  3. 炎症性疾患
    甲状腺の炎症性疾患には急性(化膿性)甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、慢性甲状腺炎(これは厳密には炎症ではありませんが甲状腺炎と名前がついているのでここに記載しました)があります。この中で外科治療が必要となるのは急性化膿性甲状腺炎です。甲状腺に感染が及ぶことは通常極めてまれですが、梨状窩瘻という先天的な異常がある場合には甲状腺に感染を繰り返すことがあります。これは咽と甲状腺が細い管でつながっている先天異常で咽から甲状腺に唾液や飲食物が流れて感染を起こします。そのため、この細い管または細い管がつながった側の甲状腺の一部を切除することがあります。
     

副甲状腺機能亢進症

副甲状腺とは甲状腺の裏側に存在する米粒程度の大きさの臓器です。通常片側に2 個、4 個存在します。甲状腺という名前ついていますが、機能は甲状腺とは全く別です。混乱を避けるため上皮小体と呼称することもあります。副甲状腺は副甲状腺ホルモンというホルモンを分泌します。副甲状腺ホルモンは骨を溶かして血中のカルシウムを上げる働きをします。血中のカルシウム濃度を維持したり骨の代謝に非常に重要な働きをしますが、時に副甲状腺からホルモンが過剰に分泌されることがあります。副甲状腺ホルモンの血中濃度が上昇すると骨が過剰に溶かされて骨粗鬆症となることがあります。また、その結果血中のカルシウム濃度が高くなり、意識障害や消化器症状がでることがあり時に死に至ることもあります。さらに血中のカルシウム濃度が上がるとそれを体外に排出するために尿中のカルシウム濃度が上昇し、その結果として尿路結石が起きます。副甲状腺機能亢進症の原因としては副甲状腺の良性腫瘍、癌、過形成が挙げられます。基本的には手術で原因となっている腫瘍を切除します。以前は骨粗鬆症や尿路結石が原因で発見されることが多かったですが、近年では検診にて高カルシウム血症が指摘され、その精査で見つかってくることが多くなってきました。無症状の事も多く、血中や尿中のカルシウムの濃度によっては経過観察となることも多いです。また、骨粗鬆症、尿路結石がすべて副甲状腺機能亢進症が原因ということではありません。心配な時は主治医の先生にご相談いただくのが良いと思います。また、腎不全で血液透析を長期にわたってお受けになっている方も副甲状腺機能亢進症となることがあります。現在は薬物治療が第一選択ですが、薬物で治療できない場合には手術をお受けいただくこととなります。

以上、当科で治療をお受けいただいている病気について記載いたしました。
当科では基本的に日本内分泌外科学会のガイドラインに沿って患者さまに最適な医療を提供しております。甲状腺疾患は非常に頻度が高い疾患です。多くは心配ない病態ですが、中には早急な治療が必用となる疾患もあります。ご心配なときには是非主治医の先生とご相談いただき、当科を受診していただければと思います。

平野 浩一 写真

平野 浩一 / ひらの こういち

所属 甲状腺外科 部長
出身大学 慶應義塾大学(1984年卒)
専門分野 内分泌外科(甲状腺、副甲状腺、頭頚部腫瘍)
主な資格・認定 日本内分泌外科学会専門医 / 日本耳鼻咽喉科・頭頚部外科学会専門医 / 日本医師会産業医 / 日本体育協会スポーツドクター
主な所属学会 日本内分泌外科学会 / 日本耳鼻咽喉科・頭頚部外科学会 / 日本超音波学会 / 日本外科学会

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