脊椎外科

脊椎外科

診療科の特色

当科は、2023年4月に新設いたしました。
われわれはこれまで東京女子医科大学 整形外科で脊椎外科を行っておりました。
首、腰の痛み、上下肢のしびれを含めた脊椎、脊髄疾患を全て治療していきます。
当科では大学で培った経験とノウハウをもとに手術を含めた治療をお勧めしております。
症状の原因をしっかり診断し治療する必要があり、脊椎専門医による診察、その他末梢神経伝導検査や筋電図検査を併用し診断します。基本的には保存加療(投薬、神経ブロック、リハビリ等)で症状が改善する事を目指します。
但し、保存加療には限界がありその場合は手術を行います。
脊椎脊髄疾患は時に加齢、基礎疾患(腎疾患、膠原病、糖尿病、悪性腫瘍等)を原因として生じる事があります。また、比較的大きな手術となる小児側弯、成人脊柱変形等に対しても治療を行っていきたいと考えております。
そのような手術に対しても、手術前から他科と連携し患者様の全身状態を確認しながら周術期を安全に治療していきたいと考え、当院のような集約的に治療できる総合病院での脊椎外科の立ち上げとなりました。
安全、安心を第一に精一杯治療を行って行きたいと存じます。よろしくお願い致します。

治療方針

病気を治すためには、正確な診断が必要です。そのため、特殊検査として必要に応じ筋電図検査を行います。筋電図検査※1は神経の最終到達部位である筋肉に針を刺入し直接筋肉より神経電位を計測し神経由来の病気かを診断する検査です。
また、手術に対しては術中にCTを撮影しナビゲーションを使用した手術(O-armナビゲーション※2)や神経モニタリング装置を使用し安全に手術が行えるようにしております。
また、術後は集中治療室を含めたバックアップ体制も完備しており、周術期において安全に治療できるように大学病院レベルの体制を整えております。

※1筋電図外来
当科で扱う脊椎・脊髄疾患や絞扼性末梢神経障害は、筋萎縮性側索硬化症や重症筋無力症などの神経内科的疾患との鑑別が必要になります。
鑑別方法として、身体所見や画像検査を十分に考察することはもちろんですが、針筋電図検査や神経伝導速度検査などの電気生理学的検査が必要になることがあります。
当科では大学病院で筋電図外来を担当している医師が在籍しており、当院でも大学と同様な検査が可能です。

※2術中ナビゲーション
O-armは手術中の使用を可能としたCT(Computed Tomography)のことで、写真のようにO型をした画像撮影装置です。
手術中に3D画像撮影が可能で、ナビゲーションシステムと接続することで、リアルタイムの3D画像により、病変部を正確に確認しながら、高い精度で安全に手術を行うことができます。加えて、侵襲の大きいと思われる手術に使用することで、より低侵襲の手術に変えることが期待できます。
また、O-armを使用した手術は一般的なX線イメージを使用する手術より、X線の被ばく量が格段に低く抑えられ、患者さまの大きなメリットになっています。

各疾患の説明

OLIF (オーリフ:側方アプローチ腰椎椎間固定術 Oblique lumbar interbody Fusion)

OLIFは従来の腰椎前方椎体間固定術(ALIF)と腰椎後方椎体間固定術(DLIF)とは異なるアプローチによる方法で、側腹部からアプローチする方法です。前方アプローチでの大血管や後方アプローチでの神経に直接触れないため、大血管損傷や神経障害のリスクが大幅に低くなります。また、後方進入による経皮的脊椎後方固定術と併用される場合が多くあり、当科ではO-arm術中イメージングシステムを用いることで脊椎の状況をリアルタイムで確認し、より安全に精度の高い手術が可能となっております。
OLIFの長所として、前述の血管損傷や神経障害のリスクが低いことに加えて、従来の腰椎固定術と比較して、筋肉に対する損傷が少なく、術後創部痛や出血が少ないため、入院期間も短くなります。また、椎体間の人工骨には幅が広いものを使用できるため、脊椎の前方支持性が増加し、側弯症などの脊柱変形に対する矯正効果も高く多くの利点があります。

経皮的脊椎後方固定術

当院は24時間救急外来の体制であるため、仕事上の転落や事故などの外傷が多く、腰椎を中心とする椎体骨折の患者さんが多数来院されます。当科では若い方やご高齢でも比較的骨密度の高い方には、低侵襲療法である経皮的固定術を勧めております。手術により骨折の痛みが速やかに軽減するため、手術をしない保存療法に比べ臥床期間や入院期間が短くすみ、早期社会復帰が可能となる利点があります。

脊椎側弯症(小児、変性)

小児側弯症外来では患者さんの側弯度に応じた治療を行っております。
装具療法は主としてアンダーアームブレースを使用しており、特発性脊柱側弯症では25°以上の角度を目安に、年齢・側弯進行度・骨成熟度などを考慮して装具を作成し、装着させていただいています。
重度の小児側弯症の場合や装具を装着しても側弯の進行が抑えられない場合には手術を行っております。手術の多くは胸椎カーブが主体の側弯ですが、最近の手術方法はO-arm術中イメージングシステムを用いた椎弓根スクリュー法を主に選択しております。O-arm術中イメージングシステムによる椎弓根スクリューの至適位置はほぼ100%であり、極めて安全にスクリューを刺入できます。そのため、手術部の椎弓根には、ほぼすべてにスクリューを刺入することが可能で、より良好な側弯の矯正が可能となりました。
最近は若年者の側弯症だけでなく、中高年に悪化する特発性側弯症・変性側弯症に対する治療・手術も増えてきております。

BKP

脊椎圧迫骨折は経年的変化を原因とする骨粗鬆症では転倒などの外傷がなくても自然に起こってしまうことがあります。圧迫骨折とは判らずに痛みを我慢して過ごしてしまう方も多く、圧迫骨折が偽関節(骨癒合不全)となり腰痛が長引くことがあります。当科では、偽関節になってしまった圧迫骨折に対してまず原因である骨粗鬆症の積極的な治療を勧めており、テリパラチド(副甲状腺ホルモン)の注射やその他内服療法を行います。多くの方で偽関節になった場合でも投薬を開始すると骨癒合が得られますが、中には骨癒合が得られない方がいて、BKP(経皮的椎体形成術、セメント充填術)を行います。
BKPはご高齢の方やご病気のためリスクの高い方でも手術が可能であり、局所麻酔で行うこともあります。術後は翌日から歩行可能で、入院期間も最短で1泊2日でリハビリも含めると通常1週間程度です。

ヘルニコア:腰椎椎間板ヘルニアの切らない治療法

椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)を開始しました。
腰椎椎間板ヘルニアに対する治療として、従来だったら手術を選択していた患者さんにヘルニコア注入療法を行い、良好な治療成績が得られております。

柴 正弘 写真

柴 正弘 / しば まさひろ

所属 脊椎外科 部長
出身大学 富山大学(1999年卒)
専門分野 脊椎外科・側弯症/整形外科一般、電気生理学
主な資格・認定 日本整形外科専門医・認定脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病指導医、難病指定医、臨床研修指導医、身体障害者認定医
主な所属学会 日本整形外科学科、日本脊椎脊髄病学会、日本臨床神経生理学学会
玉木 亮 写真

玉木 亮 / たまき りょう

所属 脊椎外科 科長
出身大学 杏林大学(2006年卒)
専門分野 脊椎外科・側弯症/整形外科一般
主な資格・認定 医学博士、日本整形外科専門医・リウマチ医・認定脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病指導医、脊椎脊髄外科専門医、難病指定医、臨床研修指導医、身体障害者認定医
主な所属学会 日本整形外科学科、日本脊椎脊髄病学会、骨折治療学会

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