小児外科

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小児外科

診療科の特色

 子どもは体が小さいだけではなく、生理機能も成人と異なり未熟です。また、手術が必要な疾患の多くは子ども特有の疾患で、手術方法も成人とは異なり、その後の成長・発達や長い人生を考えた診療を行う必要があります。当院では、子どもの特徴や小児外科疾患をよく知っている小児外科専門医が責任をもって診療にあたります。

 小児外科で扱う疾患は多岐にわたります。すべての小児外科疾患を診させていただきますが、複雑な疾患は大学病院や小児病院と連携をとって診療に当たります。また、他院で手術を受けた患者様のフォローも行います。
 また、肛門周囲膿瘍、痔、便秘症など、手術を必要としない疾患も診させていただきます。
 お気軽にご相談、ご依頼ください。

手術を行う代表的疾患

1.鼠径ヘルニア(脱腸)

(1)鼠径ヘルニアとは

 おなかの内臓を包んでいる腹膜は、赤ちゃんがお母さんのおなかの中で育っている時期(胎児期)には股の付け根のあたりから陰嚢に向かって伸びています。伸びている腹膜は胎児期、あるいは生まれて数ヶ月以内に縮んで閉じてくることが多いのですが、3%くらいのお子さんでは閉じずに伸びたままとなります(腹膜鞘状突起)。その中に内臓が出てくると鼠径ヘルニアとなります。内臓が入り込んだ腹膜鞘状突起をヘルニア嚢と呼びます。腸が出てくることが多いので、鼠径ヘルニアを脱腸と呼んだりもします。

(2)鼠径ヘルニアの嵌頓

 脱出した腸がおなかに戻らなくなると根元で締め付けられて血の巡りが悪くなったり腸閉塞をきたすことがあります。そのままにしておくと脱出した腸が腐ってしまうこともあります。それを鼠径ヘルニアの嵌頓と呼びます。大きく硬く膨れ、吐いたりぐずったりしているときはすぐに医療機関を受診してください。

(3)鼠径ヘルニアの治療

 鼠径ヘルニアは自然に治ることがなく、嵌頓を起こす危険があるので、早めに手術で治してあげる必要があります。手術は、伸びている腹膜の根元を糸でしばって閉じることにより、内臓の脱出を防ぎます。子どもの鼠径ヘルニアの手術には、①鼠径部を切開する方法と ②腹腔鏡を用いる方法LPEC法)の2種類があります。両手術法の違いを表でお示しします。両者の治療成績に差はありませんが、我々は、理論的により確実に治癒させられると考えている鼠径部を切開する方法を選択しています。鼠径法では、腹膜とともに内精筋膜というしっかりした膜を同時に閉じることができます。また、手術前の処置も簡便で済みます。LPEC法の利点として、対側の予防的処置ができることがよく言われていますが、そもそも腹膜鞘状突起が開いていても鼠径ヘルニアを発症するのは一部の子どもですので、対側の予防的処置は過剰な処置である可能性があります。

 手術は2泊3日の入院で行います。

 鼠径法と腹腔鏡手術の比較。
表

2.臍ヘルニア

(1)臍ヘルニアとは

 へその緒がとれた後に、へその緒がおなかの壁を貫いていたすき間が閉じるのが遅れると臍ヘルニアとなります。臍は薄い皮膚でおおわれているのみとなり、泣いたりして腹圧がかかると腸が脱出して臍が膨れます。乳児期には2030%の赤ちゃんが臍ヘルニアの状態ですが、すき間は徐々に閉じていき、1歳までに80%2歳までに90%の赤ちゃんで自然に治ります。

 脱出した腸がおなかの壁ではさみこまれて腸閉塞になることがありますが、とてもまれなことです。

 おなかの力が強くなってくる生後3,4か月にかけて膨れが大きくなってくるため、自然に治ったあとでも皮膚のたるみが残り、いわゆる出べそとなってしまうことがあります。

(2)臍ヘルニアの治療

 早く治すため、また出べそになるのを防ぐため、乳児期に外来で圧迫療法が行われます。圧迫療法ですき間が閉じなかった臍ヘルニア、あるいは出べそになった場合が手術の対象となります。見た目をよくする手術ですので、希望があれば手術を行います。手術は、臍にかくれるように皮膚を切開し、すき間を閉じた後、臍がへこむように傷を縫い閉じます。

 手術は2泊3日の入院で行います。

3.停留精巣(停留睾丸)・移動精巣(移動睾丸)

(1)停留精巣・移動精巣とは

 停留精巣:精巣(睾丸)はお腹の奥深いところに発生し、徐々に陰嚢の底まで下降します。精巣が下降しきれない状態を停留精巣と呼び、精巣は陰嚢の底ではなく、鼠径部やお腹の中にとどまっています。その場所は、陰嚢の底より温度が高く、精巣の発育にはふさわしくありません。その結果、将来の精巣のはたらきが低下し、不妊の原因となりえます。また、正常位置の精巣と比べ、将来がんの発生率が数倍高くなることがいわれています。さらに、精巣がねじれる危険性もあります。したがって、停留精巣では精巣を陰嚢の底まで降ろして固定する手術(精巣固定術)が必要です。手術は2歳までに行われることが推奨されています。
 移動精巣:精巣は陰嚢の底まで下降していますが、精巣を上に引き上げる反射などにより、精巣が挙上・下降を繰り返す状態です。治療を必要としないことが多いですが、挙上している時間が長いと精巣の発育に影響が出たり、徐々に高い位置にとどまってしまうことがあり(挙上精巣)、手術が必要なことがあります。

(2)停留精巣・移動精巣の治療

 停留精巣の手術は、鼠径部を切開し、下降を妨げている精管や精巣血管のまわりをはがします。その後陰嚢に1cm弱の切開を置き、精巣を納めるスペースを作り、精巣を引き降ろして固定します。精巣がおなかの中にとどまっている高度の停留精巣では、腹腔鏡を用いておなかの中をはがしたり、複数回の手術で段階的に精巣を引き降ろすことがあります。
 一方,軽度の停留精巣や移動精巣では,陰嚢の切開のみの手術が可能です。
 手術は2泊3日の入院で行います。
 術後は,思春期ころまで精巣の発育を外来で観察させていただきます。

4.急性虫垂炎

(1)急性虫垂炎とは

 虫垂は大腸の始まりである盲腸にくっついている細長い袋状の臓器で、右下腹部にあります。内腔の通過障害がきっかけとなり細菌による炎症が起こります。はじめの症状はみぞおちの痛みや嘔気、嘔吐といった急性胃腸炎の症状に似ていますが、その後発熱や右下腹部の痛みが出現し、痛みにより歩くのが難しくなってきます。進行すると虫垂が破れ(穿孔)、虫垂のまわりに膿がたまったり(膿瘍)、おなか全体に膿が広がったりします(汎発性腹膜炎)。学童以降に好発しますが、乳幼児でも発症し、乳幼児では進行が速いのと症状をうまく伝えられないこともあり、穿孔してから見つかることが多くなります。
 虫垂炎の診断は、経過や腹部診察所見に加え、超音波検査やCT検査で虫垂の腫大をみつけることでなされます。

(2)急性虫垂炎の治療

 治療は、抗生物質により炎症を抑える保存的治療と、炎症を起こしている虫垂を切除する手術的治療があります。手術はほぼ全例腹腔鏡で行われます。穿孔例では手術に伴う危険性や合併症が多くなるため、保存的治療ののちに数か月あけて虫垂切除を行う治療が選択されることが多くなっています。また、軽症例でも保存的治療が選択されます。
 受診時の状況によりもっともよい治療法を選択したいと思います。

田中 潔 写真

田中 潔 / たなか きよし

所属 小児外科 顧問
出身大学 北海道大学(1984年卒)
専門分野 小児外科 / 新生児外科
主な資格・認定 日本小児外科学会(指導医/専門医) / 日本外科学会(指導医/専門医) / 日本周産期・新生児医学会(認定外科医) / 日本小児救急医学会(SIメンバー)
主な所属学会 日本小児外科学会(名誉会員) / 日本外科学会 / 日本周産期・新生児医学会 / 日本小児救急医学会 / 日本小児血液・がん学会 / 日本内視鏡外科学会 / 日本臨床外科学会 / 日本外科系連合学会
コメント 2025年11月に着任いたしました。私はこれまで、東京大学、埼玉県立小児医療センター、自治医科大学、国立小児病院、国立成育医療センター(現:国立成育医療研究センター)、北里大学等で小児外科の診療に携わってまいりました。当院の理念「皆様とともに地域の発展に貢献します。」や基本方針「救急医療、小児医療、周産期医療、災害時医療を中心に、医療の充実に努めます。」に掲げられているように、小児医療は当院の大きな柱と考えています。その中で、地域のお子様に必要な手術を提供できる小児外科を開設しました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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